アイノ・アアルト

歴史が証明するグッドデザイン。

北欧を代表するフィンランドのテーブルウェア・リビングウェアメーカー「iittala」。北欧らしい、時代に左右されないベーシックで美しいデザインの食器や生活用品を製造し、数々の名作がここから生まれている。そんなiittalaの名作のひとつがこのグラス「アイノ・アアルト」だ。

このグラス、発売されたのは1932年、今から86年も前になる。だがどうだろう、見た目からは全く時代を感じさせない。その時代とは、古臭さ(過去)を感じないという意味だけではなく、新奇性(未来)も感じないという意味。つまり、それだけ普遍的、ベーシックであるということだ。

86年の歴史からみたら随分と浅いが、僕もこのグラスを愛用して7〜8年が経つ。その間、毎日ヘビーユースしているが、アイノ・アアルトは「日常使いのグラス」にふさわしいとつくづく感じている。ということで、「デザイナーが語る、アイノ・アアルトが日常使いにふさわしい3つの魅力」、いってみよう。

1. デザインの寿命が長い

冒頭にも書いたが、時代を感じさせないベーシックなデザイン。これがアイノ・アアルト最大の魅力だ。これは、「デザインの寿命が長い」とも言い換えることができる。僕の大学の恩師で、世界一の日用品コレクションを持つ椅子研究家、織田憲嗣氏はこう語る。

物には幾つかの寿命の要素があります。1つは素材の寿命。2つ目は構造的寿命。3つ目は機能的寿命。そして4つ目がデザイン寿命です。これらのうちの1つでも欠けると物としての寿命は終わるのです。

出典:Tokyo Vintage 東京ヴィンテージ

まだ壊れていない、まだ使える、でも「飽きた」「古臭い」「時代に合わない」という理由で物を捨てたり、手放したりすることはよくあるだろう。それは、デザインの寿命が短いが故に起こることだ。せっかく物を手にするのなら、より長く愛すことができる物を選びたい。日常使いをする物ならなおさらだ。そういう視点から、アイノ・アアルトの「飽きない」ベーシックなデザインは、日常使いのグラスにふさわしい要素の1つだ。

2. 落としにくい、そして割れにくい

フランスの定番グラス、デュラレックスの「ピカルディ」。このグラスが愛され続ける理由は、低価格であること、スタッキングができること、そして丈夫であることの3つが挙げられる。アイノ・アアルトも同様に、決して高価なグラスではないしスタッキングもできる。そして、ガラスに厚みがあり割れにくい。この割れにくさが、日常使いのグラスにふさわしい2つ目の要素だ。

実は、個人的には飲み口が薄いグラスが好きだ。なので、食事の際にビールや炭酸水を飲む時はアイノ・アアルトではない薄いグラスを使うことが多い。しかし、生活の中で喉を潤すタイミングは食事の時だけではない。キッチンで水やお茶をゴクゴクと飲む。そんな日常の何気ないシーンで使うグラスは、気を使わずラフに使える物がいい。

さらに、特徴的な「段々」のフォルム。これは、水滴が着いた状態でも指が「段々」に引っかかることで滑り落としにくくなると言う機能を持っているのだ。このように、アイノ・アアルトは「落としにくさ」と「割れにくさ」の両面から、日常使いにふさわしいグラスであると言える。

3. いつでも買い足せる

86年間作り続けられてきたアイノ・アアルト。世界中で愛されるこの製品は、これからもiittalaを代表する製品のひとつとして作り続けられるだろう。2つ目の要素で割れにくいと書いたが、言ってもガラス製品。使っていればいつか割れてしまう日がやってくるかもしれない。

そんな時でも、アイノ・アアルトのような「定番品」は、また同じものを買い足すことができる。これは、1つ目の「デザインの寿命が長い」が故のことだが、言い換えるのであれば「製品としての寿命が長い」と言えるだろうか。つまり、売れ続ける製品であると言うことだ。どれだけ良い作りで良いデザインの物でも、売れなければ作られなくなってしまう。そう言う意味でも、アイノ・アアルトは本当に名作だと思うのだ。

グッドデザインの教科書のような製品だなぁ

僕は、大学でデザインを学んでいる時にこのグラスを購入した。それから7〜8年が経ち、こうして記事をここまで書いてきて改めてそう思う。ずいぶんと小傷も付き、購入当初ほど輝いてはいないけれど、これからもこの名作を愛用し続けていきたいと思う。

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iittala(イッタラ)Aino Aalto(アイノ・アアルト)